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【腰痛基礎知識】腰を支える骨・神経・筋肉の仕組みとは!?

類人猿

 

腰痛は4足歩行から2足歩行へと進化した人間の宿命であると言われます。人間は、大殿筋や腸腰筋、腹筋・背筋などを発達させ、背骨のカーブをS字状に保つことで、2本の足で直立し歩くことを可能にしてきました。

 

ところが文明が進化する中で、人間は、野山を駆け回って食料を手に入れる狩猟民族から一か所に定住する農耕民族となり、さらに現代では、一日中イスに座ってのデスクワークが当たり前になってきました。

 

当然、2足歩行へと進化した頃の、腰を支えるための筋肉のバランスは失われ、それが背骨(腰の骨)への負担、また、腰周辺の筋肉そのものへの負担が増大することになり、腰痛で悩む人が増える原因になっているわけですね。

 

ここでは、そんな現代人にとって切っても切れない病気である『腰痛』について、それがどのようなメカニズムで起こるものなのか、また『腰痛』にはどのような種類のものがあるのか等についての基礎知識をご紹介したいと思います。

 

 

腰痛のメカニズム

背骨

 

@背骨の構造

医学的に『脊柱』と呼ばれる背骨は、

 

頸椎(首の部分)

胸椎(胸の部分)

腰椎(腰の部分)

仙骨

尾骨

 

の5つの部分で構成されています。

 

頸椎から腰椎までの骨は、24個の『椎骨』と呼ばれる骨が積み重なってできており、頸椎は7個、胸椎は12個、腰椎は5個の椎骨から成り立っています。

 

椎骨は円柱形をしたお腹側の部分の『椎体』と、弓の形をした背中側の部分の『椎弓』からできています。

 

椎体と椎体の間には、椎骨同士が直接ぶつかるのを防ぎ、クッションの役割を果たしている『椎間板』という軟骨があります。また、椎弓と椎弓は『椎間関節』という小さな関節によってつながっています。

 

背骨を横から見るとなだらかなS字状のカーブを描いています。頸椎は前に反り、胸椎は後ろに反っています。腰椎は再び前に反り、その下の仙骨は後ろに反っています。

 

背骨がS字状になり、また大殿筋、腸腰筋、腹筋、背筋などの腰周辺の筋肉群がそれを支えることで上体の重みを分散させています。

 

A神経の構造

背骨を構成するひとつひとつの椎骨には、お腹側の部分である椎体と、背中側の部分である椎弓との間に『椎孔』と呼ばれる穴(すき間)があり、背骨の中をこの穴が貫いています。

 

背骨を貫くこの穴のことを『脊柱管』といい、その中を『脊髄神経』が通っています。脊髄神経は、脳とともに全身をコントロールする中枢神経です。

 

脊髄神経

 

脊髄神経は第一腰椎のあたりで終わり、その下には、脊髄神経から枝分かれした馬の尻尾のような形をした末梢神経がつながっています。その形からこの神経を、『馬尾神経』と呼んでいます。

 

脊髄神経と馬尾神経からは、神経の枝である『神経根』が、5個ある腰椎のすき間(椎間孔)から5対出ており、これを『腰神経』と呼びます。

 

わずかの個人差はあるものの、5対の神経根のそれぞれが、どの筋肉や皮膚の痛み・しびれ等に関わっているのかということは、ほぼ決まっています。

 

そのため、体のどの部分に痛みやしびれがあるのかという自覚症状から、どの神経が障害されているのかということが、おおよそ分かるんですね。

 

B骨の病気(変性)による腰痛

老化や筋力の低下、腰への負担が大きい仕事や姿勢などによって背骨を形作る個々の椎骨や椎間板が変性し、その周囲の神経根を刺激したり、脊柱管を圧迫したりすることで、これらの神経がその良くない刺激を脳に伝えた結果、わたしたちはそれを“腰痛”として感じます。

 

こうした腰痛の原因となる代表的な骨(腰椎)の病気には次のようなものがあります。

 

腰椎椎間板ヘルニア

腰部脊柱管狭窄症

腰椎椎間板症

腰椎変性すべり症(腰椎分離すべり症)

変形性脊椎症

骨粗しょう症

 

これらの腰椎の変性によって周囲の神経根が刺激されると、その神経根からつながっている部分に痛みやしびれが起こります。

 

また、脊柱管そのものが障害されると(脊柱管狭窄症)、痛みのために長距離が歩けなくなる『間欠跛行』が起こります。

 

さらに、馬尾神経が圧迫されると、下肢の筋力低下や排尿・排便障害という、重篤な症状が現れることもあります。

 

筋力の低下が腰痛を招く

腰周辺の筋肉

 

@腰を支える筋肉群

最初に述べたように、人間が2足歩行をし、背骨を自然なS字状カーブに保つためには、腰を支える筋肉群の働きが欠かせません。特に腰の安定に関わりが深いのは次の4つの筋肉です。

 

脊柱起立筋(背筋)

背中側にある背骨に密着した筋肉で、背骨を支える筋肉の中で最も大きいものです。

 

腹筋(腹直筋)

お腹側にある筋肉で、腰の曲げ伸ばしや回転させるなどの動作を支えています。また、腹圧を上げることで背骨の負担を軽減しています。

 

大殿筋

骨盤と大腿骨をつなぐお尻の筋肉で、腰椎を下から支え、背骨が自然なS字状カーブを保つようサポートしています。

 

腸腰筋

腰椎と大腿骨をつなぐ筋肉群。背骨を下から支えて正しい姿勢を保ち、前屈の動作を安定させるなどの働きをしています。

 

A姿勢別の腰への負担

背骨が自然なS字状カーブを描く正しい姿勢で立っているときでも腰椎には体重とほぼ同じ力が加わっており、特に椎骨と椎骨の間にある椎間板には大きな負担がかかります。

 

正しい姿勢で立っているときの椎間板への負担を100とした場合の、姿勢別の腰への負担は次のようになります。

 

姿  勢

椎間板への負担

あおむけで寝る

25

横向きで寝る

75

正しい姿勢で立つ

100

上体を20度前傾させる

150

イスに正しい姿勢で座る

140

イスに座って前かがみで20kgの荷物を持つ

275

 

座っている姿勢は、一見、楽に思われがちですが、実は立っている時の1.4倍の負担が腰にかかっているんですね。また、立っている時も座っている時も、前かがみの姿勢はとても腰への負担が大きくなることが分かります。

 

逆に、腰への負担が最も少なくなるのが、あお向けで寝る姿勢。横向きで寝た場合でも、立っている時よりも25%も腰への負担は少なくなります。

 

B筋肉への負担過多・筋力の低下による腰痛

背骨の自然なS字状カーブは、腹筋が前から、背筋が後ろから支えることで維持されています。またお尻の筋肉である大殿筋と、腰椎と大腿骨をつなぐ腸腰筋が骨盤を支えることで、背骨のカーブをサポートしています。

 

腹筋や背筋、大殿筋・腸腰筋は、自らの体の中にある『自前のコルセット』と呼ばれる所以ですね。

 

しかし、年齢を重ねることでこれらの筋力が低下してくると、正しい姿勢を維持することが困難になり、腰痛のリスクが高まります。

 

特に交通機関の発達した現代では歩く機会が減り、逆にパソコンワークやデスクワークなど、腰に負担がかかる姿勢での長時間の仕事が増えた上に、運動する時間がなかなか作れないこともあり、筋力が低下している人が増えています。

 

正しい姿勢を維持することができなくなると腰椎に大きな負担がかかり、それが腰椎の変性を招き、腰痛を引き起こす原因になっています。

 

また、悪い姿勢を続けることで腰回りの筋肉が緊張し、血液の循環が悪くなったりすることで、腰痛を引き起こすこともあります。

 

筋力は運動をすることで強くすることができますし、それは高齢者の場合でも同様です。また決してきついトレーニングを必要とするものではなく、軽めの筋力トレーニングやウォーキングなどでも筋肉を鍛えることは十分に可能です。

 

腰痛の改善・予防のためには、これらの腰回りの筋肉を鍛える筋力トレーニング、また、筋肉の柔軟性を持たせるストレッチなどの腰痛体操が効果的なんですね。

 

放散痛と関連痛

腰痛持ちの女性

 

腰痛の原因となる病気の中には、腰以外の痛み・しびれを伴うものがあり、大きく分けて『放散痛』と『関連痛』の2つがあります。

 

@放散痛

『歩く』、『立ち上がる』など、ある動作をしたときに、腰以外の部分にまで痛みやしびれが響くもので、代表的なものに『坐骨神経痛』があります。

 

『坐骨神経』というのは、脊髄から枝分かれした神経が集まってできたもので、腰椎の変性などによってこの神経が障害されると、お尻から太ももの裏側、膝裏からふくらはぎなどに、痛みやしびれが起こります。

 

坐骨神経痛の原因として多いのは、『腰椎椎間板ヘルニア』や『腰部脊柱管狭窄症』などです。腰を前に曲げた時に痛みやしびれがひどくなるのは腰椎椎間板ヘルニア、逆に、腰を反らせたときに痛みやしびれがひどくなるのは腰部脊柱管狭窄症の特徴です。

 

A関連痛

関連痛は、動作とは無関係に腰以外の部分にも痛みがあるもので、多くの場合、内臓の病気が関係しています。

 

腰痛とともに胃やみぞおち、背中が痛むような場合には、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、急性膵炎、胆石などの内臓疾患が隠れている場合があります。

 

心因性の腰痛

ストレスを感じている女性

 

@ストレスが腰痛の原因となることがある

昔から『風邪は万病のもと』と言われてきましたが、今や『ストレスは万病のもと』、ストレスは様々な体の不調を招く大きな要因であることが明らかになってきています。

 

ストレスによって胃が痛くなったり、ひどい場合には胃潰瘍になることもあることは広く知られています。これと同様に、ストレスが腰痛の原因になることがあるということも、近年の研究によって明らかにされています。

 

腰の骨などに腰痛を引き起こす明らかな病気が見られる腰痛を『特異的腰痛』と呼び、その反対に、レントゲン検査などでも骨に異常が見られない、いわゆる“原因不明の腰痛”を『非特異的腰痛』と呼びます。

 

『非特異的腰痛』は、腰痛を訴える人の実に85%にものぼりますが、従来、『非特異的腰痛』とされてきた腰痛の多くが、ストレスが関係しているのではないかと考えられているのです。

 

また、何らかの骨の異常による腰痛がある場合でも、ストレスが強いと、その痛みが必要以上に大きなものとして脳に伝えられたり、痛みの治療が長引いたりすることがあることも明らかになっています。

 

A心因性の腰痛の特徴

ストレスが原因の腰痛には、朝、出勤前に最も腰痛がひどくなり、夕方になると軽くなるといった時間帯による痛みの変化があったり、痛みの出る場所や痛みの程度が日によって変わるなどの特徴があります。

 

また、腰痛以外にも、頭痛や胃腸の不調、不眠や不安感・気分の落ち込みなど、ストレスを疑わせる症状があります。

 

骨に異常が見られず、悪い姿勢や運動不足などによる腰の筋肉への負担といった要因もない場合には、ストレスによる腰痛を疑ってみることも必要です。